法月綸太郎の長編ミステリー小説『キングを探せ』の読書感想&レビュー記事です。
任意で表示を選択可能なネタバレ感想パートを含みます、未読の方はご注意ください。
『キングを探せ』の基本情報
『キングを探せ』は、著者と同名の作家兼探偵「法月綸太郎」と、父親で警察官の「法月警視」が登場する推理小説「法月綸太郎シリーズ」の長編作品。
- タイトル:キングを探せ
- 著者:法月綸太郎
- 出版社:講談社
- 初版発行年:2011年
- ページ数:336p(文庫版)
- メディア:単行本、文庫本、電子書籍
- ジャンル:ミステリー、推理小説、倒叙もの、2010年代
2013年のブックランキングでは、原書房「本格ミステリ・ベスト10」で1位、早川書房「ミステリが読みたい!」で2位、「このミステリーがすごい!」で8位にランクイン。
あらすじ
4枚のカードでシャッフルされた完璧な交換殺人!
寂れたカラオケ・ボックスの一室に、奇妙なニックネームで呼び合う4人の男たちが集う。なんの縁もなかったはずの、彼らの共通項は殺意だった。
それぞれにどうしても殺したい相手がいることで結託した彼らがもくろんだのは、交換殺人。誰が誰のターゲットを殺すのか。それを決めるのはたった4枚のカード。
そして、ひそかに実行され始めた殺人──。シャッフルされた完璧な犯罪計画に、法月警視と綸太郎のコンビが挑む!
作品の特徴(ネタバレなし)
『キングを探せ』の舞台は2010年代の日本。犯人グループ4人が交換殺人による完全犯罪を計画するためにカラオケボックスで秘密の会合を持つ場面から話が始まる。
本作は、最初から読者に犯人・犯行の一部を示す”倒叙もの”と、お話の論理的整合性が取れていて犯人やトリックを暴くのに必要な手がかりが作中に記述されている”本格ミステリ”が合わさったような作品となっている。
一番の見どころは、倒叙ものの面白さである「犯人VS探偵役」の頭脳戦や駆け引き。そこに本格ミステリ(本格推理小説)的なトリックもあって楽しい。
「法月綸太郎シリーズ」の作品となるが、他のシリーズ作品を読んでいないと楽しさ・面白さが減るような要素はほぼ無し。単発作品としても普通に読めそうだった。
『キングを探せ』の書かれ方は、淡々としているというか、サバサバしているみたいな雰囲気で、推理小説によくある”おどろおどろしさ”はかなり控えめな印象でした。
「エグい」や「グロい」成分が抑えられていて、パズル要素が強くなっています。
ネタバレ感想
タイトルの「キング」や、中盤までの綸太郎の推理そのものが「ジョーカー」の存在を隠す作者のミスリードだったわけで、まんまと騙されてしまった(ノ∀`)アチャー
最終的にはしっかり「フーダニット」と「ハウダニット」してましたな~。
そこが妙でもあるんだろうけど、視点が変化するたびに表現が変わるのには手こずらされたなあ。
『キングを探せ』での綸太郎は推理担当の安楽椅子探偵、親父さんは捜査・調査・現場担当の刑事役で型にはまっていたため、例えば「ヒロイン」「コミック/コメディリリーフ」「あからさまな悪役」などがいてくれた方が娯楽作的には楽しくなった気がする。
上述した記号を覚えにくかったのは、登場人物がいまいちキャラ立ちしていなかったのもあるかも?
まとめ
『キングを探せ』は、倒叙ものと本格ミステリが合体したような作りになっていて、中々面白い作品でした。
著者との対決的には、トリックを見破れなかったというか、そもそも読み違えていたので完敗!
本作は「あっと驚くどんでん返し」という感じはないのですが、最後まで読むと「あ~、そういうことか」と、納得感は強かったです。
個人的にマイナス評価だったのは、パズル要素の組み合わせを覚えなければ分かりにくかったのと、登場人物のインパクトがちょっと弱かった点です。
ただ、そのあたりは個人の好みの問題でしょうから、パズル・ミステリのような謎解きが好きな人はすんなり読みやすくなっていると思います。