星新一の短編小説集『ボッコちゃん』の読書感想・レビュー記事です。
基本情報
タイトル | ボッコちゃん |
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著者 | 星新一 |
初出 | 1971年 (収録作品は1958年~1968年) |
ジャンル | ミステリー、サスペンス、SF、ファンタジー、ホラー |
キーワード | ショートショート、ユーモア、風刺、どんでん返し、古典 |
作品概要
『ボッコちゃん』は、星新一が1971年に発表した短編小説集。タイトルと同名の作品を含む、著者自選の50編が収録されている。
収録作は、1編あたりの長さが大体3~6ページ(1000~2000文字)くらいの、いわゆる「ショートショート(超短編)」。
ジャンルはバラエティに富んでいる。ミステリー、サスペンス、SF、ファンタジー、ホラーの他、寓話や童話的なお話も含まれる。鋭い風刺、意外な結末、不思議な情緒、思わず笑ってしまうようなユーモアなど盛り沢山!
星新一の公式サイトに掲載されている初出データによると、本作に収録されている作品の初出は1958年~1968年となっていた。
方向性
おもしろさ (知的、好奇) | |
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たのしさ (娯楽、直感) | |
コミカル (陽気、軽快) | |
シリアス (陰鬱、厳重) | |
よみやすさ (文体・構成) |
趣きの異なる色々な作品が収録されている。秀逸な落ちの面白い作品、トボけた雰囲気で最後に笑わされる作品、静かな怖さが凍みる作品、何だかよくわからない不思議な作品、などなど。
共通している特徴は、物語の舞台や登場人物の描写が必要最小限なこと。設定が厳密でないため想像力を働かせやすく、これが読む楽しさに繋がっているようでもある。
ショートショートの特徴である短さと、難解さのない易しい表現でサクサクと読み進めることができる。ちょっとしたスキマ時間にも読みやすい。
簡潔な表現に少ない登場人物、キレの良い洗練されたお話だらけです。
書かれた時代もあってか、設定・価値観には幾分古さが感じられました。著者のあとがきによると、初期の作品が多く収録されてるそうです。
感想・考察
ねらわれた星
落ちで「そういうことだったのか🤣」と笑わされた後に、自分が残酷な想像をしていたことに気付いた。
結末に至らないと「星」が地球かは分からない、二本足の生き物も「人」とは書かれていない。「皮をはぐ」というのも、どこをどのようになんて具体的には描かれない。
残酷な想像をしておかなければ、物語の結末は滑稽な笑い話にならない。笑えたということは、残酷な想像ができてしまったということだ。
人の残虐性を見透かしているかのようだった。
闇の目
両親の憂いの正体は、坊やの能力ではなく外見だった。
部屋の明かりを消しているのは、息子の顔を見たくないからだ。愛せないからだ。未知の特殊能力に対する不安、息子の存在によって強いられる境遇は言い訳にすぎない。
能力、人格に先立つ外見。原始的なセンサーでしか愛情を持ち得ないこと。風刺の効いた怖い話だった。
生活維持省
秀逸な2段落ちだった。
理想世界の悲喜、産み落とされた世界の理不尽。想像が膨らむ!
ユートピアかディストピアか?
意図であれ、偶然であれ、恩恵を充分に享受した者には幸福な理想世界、そうでなかった者には不条理な地獄だ。
生きる権利と死ぬ義務が、誰にでも平等に与えられる社会。それは、秩序が自然の成り行き任せではなく、人の手で理性的に保たれる世界。
選別の過程は倫理的に、手段は安楽になるだろうが、結末は変わらない。ホモ・サピエンスという枠組みの中に在る限り避けられないだろう。
産み落とされた世界
欲望と打算の結果、我々が産み落とされたのは、生存競争と戦争のある世界だ。
生きる権利は言葉で”保証”されるけれど、実際の”保障”は成されない。死ぬ義務は能力(才能・体質・所属・財力・運など)によって不平等に強いられる。
主人公の辞世の思いには、現実社会の営みに対する批判も含まれていたと思う。
まとめ
『ボッコちゃん』面白かったです。
全体的に風刺の印象が強かったです。変化球で人・社会・物事について冷徹に指摘と批判をしているような。でも、語り口は棘がなくて優しいから読みやすい。不思議な雰囲気でした。
短いお話の中に表層的な楽しさと深層的な含蓄が含まれていて、どんな意味が込められているのか深読みするのが楽しかったです。読み応えも充分でした。
前に読んだ”ほのぼのSF風味”が強い『きまぐれロボット』に比べるとカロリー高かったです。
テレビドラマ
2022年にNHKで放送されたテレビドラマ作品。1話15分くらいの短編ドラマです。
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