稲垣栄洋の書籍『世界史を大きく動かした植物』の読書感想・レビュー記事です。
人類の歴史に馴染み深い植物を、歴史的観点を主軸に考察したおもしろ雑学本!
基本情報
タイトル | 世界史を大きく動かした植物 |
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著者 | 稲垣栄洋 |
初出 | 2018年 |
ジャンル | 一般教養書 |
キーワード | 植物、農作物、歴史、雑学 |
作品概要
『世界史を大きく動かした植物』は、植物学者の稲垣栄洋による一般教養書。初出は2018年。
人類に大きな影響を与えた植物の成り立ちを、歴史的観点を中心に、科学・技術・文化など多方面から考察している。
取り上げられる植物は14種類「小麦、稲、胡椒、唐辛子、ジャガイモ、トマト、綿、茶、サトウキビ、大豆、玉ねぎ、チューリップ、トウモロコシ、桜」。
切っても切れない人類と植物のしがらみ!
傾向・雰囲気
おもしろさ (知性、好奇心) | |
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たのしさ (娯楽、直感) | |
コミカル (陽気、軽快) | |
シリアス (陰鬱、厳重) | |
よみやすさ (文体・構成) | |
よみごたえ (文量・濃さ) |
植物の生態・作物の性質などを解説した上で、人と植物に関する逸話が紹介されています。
平易な文章と構成で読みやすい雑学本といった感じです。
感想・考察
胡椒の価値
海運による供給が安定する以前のヨーロッパにおいて、金と同じ価値を持っていたとされる胡椒。
高価になった理由として「家畜の肉を長期保存するため」という説が示されていた。しかし、実際の理由は違うところにあるように思えた。
胡椒には殺菌成分が含まれるが、風味付けに使う程度の少量では食品保存効果は期待できないだろう。しかも、既に塩漬け肉という優秀な保存食があった。実用性に疑問あり。
別の説として、希少性と嗜好性によって高価になったという考えの方が頷ける。裕福な貴族が遠い異国の希少な香辛料をステータスとして求めたことで価格が上がった。となれば合点がいきやすい。
まあどっちでもいいのだけど、色々と歴史の可能性を想像できるのは楽しい😆
川の堤防に桜が植えられてるワケ
丈夫な護岸を作る水害対策の一環だったという説が意外だった。
桜の花見客が大勢訪れることで土手が踏み固められるっていうのも、実際のところや効果のほどはともかく、人の生態を利用した発想で面白いと思った。
桜を取り上げた最終章が、「日本人が愛した」とか「日本人の心を育てた」などと不条理な観念で語られていたのは残念。そもそも、桜は世界史を大きく動かしていないと思う。
主導権の所在
人と作物、主導権はどちらにあるだろう。
共生しているのは確かだ。どちらがより寄生的かで考えると、作物は悠々と数を増やし、人は苦役が増大し続けている。
地下資源の化石燃料に手を出した人類が後戻りできないのも作物のためだ。化石燃料なしでは最低限必要とする量の作物すら生産できない。文明を維持するためには使い続けるしかないが、その先に待っているのは😨
サピエンス全史を思い出した。
まとめ
『世界史を大きく動かした植物』、面白かったです。
人類の発展と密接に関わる代表的な植物の逸話を掻い摘んで観ることができて楽しかったです。ただ、「その説はどうなの?」と疑問符の付く俗説的な部分もちょくちょくあるようでした。
植物と歴史の軽めの雑学を楽しみたいときに良いかと思います。
2023年5月確認時、『Kindle Unlimited』の定額読み放題対象になっていました。