【読書感想/紹介】長編本格ミステリー『占星術殺人事件 改訂完全版』 著:島田荘司

4.0

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島田荘司の長編本格推理小説『占星術殺人事件 改訂完全版』 の読書感想・紹介・レビュー記事です。

迷宮入りから40数年が経った猟奇的事件の謎に名探偵・御手洗潔が挑む「御手洗シリーズ」の1作目です。

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基本情報

  • タイトル:占星術殺人事件 改定完全版
  • 著者:島田荘司
  • 出版社:講談社
  • 初版発行年:1981年
  • ページ数:544(文庫版)
  • 価格:922円(Kindle版)
  • キーワード:ミステリー、本格推理、探偵、占星術
島田 荘司
島田 荘司さんの後を追って、Amazon.comの島田 荘司の著者ページから参考資料を探します。
島田荘司 - Wikipedia

どんな本?

『占星術殺人事件 改定完全版』は島田荘司のデビュー作である長編推理小説。初版は1981年に出版、「改訂完全版」は初版・改訂版になどに加筆・修正が加えられて2008年に出版。

ジャンルは、広義のミステリー、狭義の本格推理(本格ミステリー)。文庫版では500ページを超える大作となっている。

探偵役の主人公「御手洗潔(みたらい きよし)」、相棒のワトソン役「石岡和巳」が登場する「御手洗シリーズ」の1作目。

どんなお話?

1936年(昭和11年)、東京のある一家の元で「占星術殺人事件」と呼ばれることになる猟奇的な連続殺人事件が起きる。
まず自宅にある離れの密室で画家の父親が殺される。次に5人姉妹の長女が嫁ぎ先の家で殺される。さらに残った4人の姉妹と従姉妹の2人を加えた計6人が行方不明になり、その後、彼女らは遺体の一部を切り取られた状態で日本各地で発見される。
密室で殺害された父親は遺書めいた小説を遺しており、そこには占星術にならって6人の娘の肉体を部分的に使った「完璧な女(AZOTH=アゾート)」を作る計画が記されていた。
有力な容疑者たる父親は最初に殺されている。外部犯行説は否定され、生き残った家族・親類のほとんどに犯行は困難と思われた。一応の解決が図られ母親が逮捕されるも、多くの謎が残ったまま時が過ぎていく。

1979年(昭和54年)、事件から40年以上が経った頃、東京に居を構える占星術師「御手洗潔」の元にある依頼が舞い込む。
依頼主は、警察官の父が遺した手記に「占星術殺人事件」に関する新たな情報が含まれていることを知った女性。しかし、その情報が世間に知られれば父の名誉が著しく傷つくことが予想されたため、事を公にせず事件の真相究明を求め御手洗を頼ったのだった…。

いわゆる素人探偵ものです。
語り手は主人公「御手洗」の相棒である「石岡」。物語は彼が事件について綴る体で進みます。
約40年前に起きた迷宮入り事件の謎を解くのが主題ですな。

ざっくり方向性

おもしろさ
(知的/興味深い)
4.5
たのしさ
(直感/娯楽性)
4.0
あかるさ
(テーマ/雰囲気)
2.0
よみやすさ
(文体/言葉選び)
2.0
よみごたえ
(文量/情報量)
4.0

まず最初に、本格推理小説としての面白さは抜群だった。謎解きやトリックにおいて、欠けている何かがカチッとはまったときの「ははぁ~、なるほど!!」な面白さは凄かった。本当によく出来ている。

推理小説における「トリック」「犯人当て」など娯楽的な部分においても完成度が高い。謎を解くのに必要な材料が、解決編に入る前に全て提示される「フェア」な構造になっていて、なおかつ、二度に渡って著者から読者への「挑戦状」が叩きつけられるのも謎解きに精が出て楽しい!

全体の雰囲気は、作中の事件の性質(占星術をテーマとする猟奇的な連続殺人)もあって暗め。(犯行に関連する部分での)表現は特別に凄惨ではないのでキツくないと思う。想像すると本当にグロいけど。

読みやすさについては、特に序盤がしんどい部類の作品と思われる。事件・登場人物の全体像を把握するのに結構なページを読み進めないといけない。

まず登場人物が多い(事件関連で22人、全体で31人)、読み始めにこの人数の多さに圧倒されてしまう。次は序盤の構成が冗長な点で、仮に全体が400ページだったとすると、150ページくらいまで(全体の1/3以上)は、ひたすら事件の説明・情報の連続でインプット作業に苦労する。

捜査・推理など小説的な面白さ・楽しさが展開していくのはその後からになるので、序盤は読破するための山場になっているかも。

ページ数は文庫版だと500ページ以上あるので、読み応えは充分。全体としては間違いなく面白い作品なので、前述した序盤のしんどさを越えれば、重厚で濃厚な読感を満喫できると思う。

 少々遅かったかもしれない。しかし、これも完璧なフェアプレーを期することは無論だが、一人でも多くの読者にこの謎を解いてほしいがためである。
 勇気を振り絞り、私はここらであの有名な言葉を書いておこう。
<私は読者に挑戦する>
 今さら言うまでもないが、読者はすでに完璧以上の材料を得ている。また謎を解く鍵が、非常にあからさまなかたちで鼻先に突きつけられていることもお忘れなく。

出典:島田荘司 | 占星術殺人事件 改訂完全版 | 読者への挑戦 | 講談社

↑の引用は、著者からの「読者への挑戦状」。こういうのが作中に2度あります。探偵になった気分で、猟奇的な事件の闇を理性の光で暴き出すのです!
自分で謎解き推理する場合なら、解決編前に途中で読み返すことになると思うので、序盤はあえて軽めに流して読むのもいいかもしれません。

ネタバレ感想

警告バナー

ネタバレを含んだ感想です。ミステリー作品なので未読の方は特にご注意ください。

犯人当て・トリック看破

解決編を読み進めるのを一時停止して推理・考察を開始。その結果、真犯人と一連の殺人に関するトリックは、概ね看破できた(≧∇≦)/

提示された情報の中から答えを導き出せること「フェア」が保証されていたので、推理の道筋は立てやすかったと思う。始点はやはり6人の娘が犠牲になるアゾート殺人。

  • (事件全体で)しっくり来る犯人がいないということは、自らを犠牲者と偽装している者がいる。
  • アゾート殺人で身元の特定ができないと考えられるのは「ときこ、のぶよ、れいこ」の3人。そこから「頭蓋骨の復顔でも特定ができない」に合致するのは首のない「ときこ」のみ。
  • 5人の死体のパーツを組み合わせることで、一部が失われた6人分の遺体を作り出すことができる。
  • 「ときこ」は「かずえ」の殺害が可能。脅迫のための精液入手も自分で可能。
  • 「ときこ」は母のアリバイ証言さえなければ「父:平吉」の殺害が可能。平吉の手記も捏造・改竄が可能(=首のない「ときこ」を特定するための腰の痣も情報として捏造できる)。

総合的かつ最終的には「ときこ」しかないだろうでファイナルアンサーだった。確定事項の事実だけ組み合わせていくと解けるように作られている点はまさに本格推理小説!

だいたいの謎は解く(というか想定か)ことができたけど、細かい部分では「そうだったのか」と唸らされる部分があった。

例えば、6人の娘の遺体が発見される順番・タイミングを制御するための埋める位置と掘る深さについて。発見のタイミングにばかり考えが向かって、接合部分の検証によるトリックの露見を防ぐための「埋める位置+発見時期」の組み合わせにまでは頭が回らなかった。

他にも、遺体一つにつき切断箇所が一箇所というのも、よく出来ている点だと思った。首と膝下を切断される2体を除いた4体(もしくは3体:推理状況による)は、2箇所を切断しなきゃならないとしたら、複数犯や男手を連想してしまうから、これも良いカモフラージュになりそう。

「ときこ」が20代前半で未婚なのも効いていた。時代背景的には処女を連想させる(あくまでも先入観で、はっきりした情報はないのが味噌)のも、「かずえ」殺害に関わってないことを匂わせる良いミスリードだった(処女だったら情事の相手が「かずえ」ではない事を文二郎に悟られる危険が高まる)。

敢えて言うなら

敢えて粗探しをするなら。

上手いこと利用されちゃった例の警察官「竹腰文二郎(※父の方)」。さすがに犯人に「都合よく動きすぎ」という気がした。わかりやすいトリックのためのギミック。

他にも気になったのは、アゾート殺人における娘たちの血液型。解決編で御手洗が指摘してはいるけど、もしも戦後しばらくしてからの警察の捜査でなら看破されていたであろうと。全員A型で後出しなのは弱い。

もう一つは、第三章の「アゾート追跡」(京都に行っての捜査パート)。章の全体が「ミスリード」兼「解決編で犯人と面会するための段取り」って感じで、終盤の推理の盛り上がりにはあまり貢献していなかったような。容疑者を絞り込むっていう効果はあるのだろうけど、あきらかにヘッポコ担当(ワトソン役)な石岡のドタバタ劇ばかり描かれていて微妙だったかな。

まとめ

4.0

『占星術殺人事件』は、本格推理小説らしい論理的に謎を解くことができる知的面白さと、秀逸なトリックによる「どんでん返し」もあってすごく楽しめました。

構成的にちょっと読みづらいなと思うところはありましたが、ガッツリと本格ミステリーを読みたいって時にはぴったりの一冊だと思います。

伏線がしっかり回収されるので、謎を解くことが出来ても出来なくても「なるほど!」と納得させてくれること間違いなしの面白い作品でした。

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