【読書感想/レビュー】『ぼくたちの洗脳社会』 著:岡田斗司夫

1995年に出版された岡田斗司夫のユニークな社会論『ぼくたちの洗脳社会』の読書感想/レビュー記事です。

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基本情報

  • タイトル:ぼくたちの洗脳社会
  • 著者:岡田斗司夫
  • 出版社:朝日新聞社
  • 初版発行年:1995年
  • ページ数:267p(文庫)
  • メディア:単行本、文庫
  • 価格:560円(+税)
  • ジャンル:社会、文化、思想、未来予想

著者について

著者の「岡田 斗司夫(おかだ としお)」氏は、”オタキング”を自称するオタク話の面白いオジサン。

アニメ「ふしぎの海のナディア」などを制作した株式会社ガイナックスの初代社長で、NHKで放送していた「BSマンガ夜話」にもパネリストで出演していた。

岡田斗司夫 - Wikipedia

ニコニコやYouTubeで配信されている『岡田斗司夫ゼミ』は、映画・アニメ・漫画・SF・科学・歴史・社会などについて独特な視点で解説されているので結構面白い。

岡田斗司夫ゼミ4月15日号「本当は10倍怖い『火垂るの墓』~アニメ界の怪物・高畑勲監督追悼特集」

特にジブリ回は目から鱗で好きです。「宮﨑駿×高畑勲×鈴木敏夫」絡みの話も面白い!

「洗脳」とは?

『ぼくたちの洗脳社会』は、タイトルに含まれる「洗脳」のインパクトが強いけれど、中身は実際のところ”マイルド”な感じだった。

本書での「洗脳」という言葉は、「人々の価値観をある方向へ向かわせようとする行為全般」という意味で使われている。

例えば、ドラマや映画のあるシーンで視聴者を泣かせたい・感動させたいという意図で流される「それっぽいBGM」や、会話の際に誘い笑いで相手に「楽しい・面白い・明るい話だよ」と同調を促すようなものも「洗脳」の一種となる。

正常な思考能力を無理やり奪って極端な思想を刷り込んだりするような、怖いイメージの「洗脳」ではなくて、僕達の日常にありふれている「最低限のエチケットを守った意図・影響の押し付け合い」のようなものだと考えると分かりやすいかも。

こういう意味で「洗脳」という言葉を使うのは面白いなと思いました。逆に、イメージ・先入観の影響力の大きさも窺い知れるような気がします。

洗脳社会による変化と楽しみ方

  • 1章:パラダイムシフトの時代
    • 農業革命→産業革命→情報革命new!
    • 技術の進歩が価値観を変化させる
  • 2章:マルチメディア中世
    • 情報が有り余り、資源を使わない感覚・趣味へ
  • 3章:洗脳社会とは何か
    • すべての人が洗脳者になれる「自由洗脳競争社会」
  • 4章:価値観を選択する社会
    • 個人は一貫性よりも複数の価値観を併せ持つ総体に
  • 5章:新世界への勇気
    • 古い価値観には戻れなくなるけど、新しい世界を楽しもう!

『ぼくたちの洗脳社会』で論じられるのは、社会の変化に対する危機や警告ではなく、「自由経済社会」が「自由洗脳社会」へと変化する際に生じる現象やその楽しみ方。

論理的ではあるのだけど、語り口がエンターテインメント的なのもあって、暗い感じもなくゆる~く読めるのが特徴。

「来るべき社会はこうなる!」という未来予想の本でもあるので、出版(1995年)から20年以上経った2019年現在の社会の様子で答え合わせしてみるのも面白いかも。

2019年における実感

平成から令和へと年号も変わった2019年時点での実感は、社会は「洗脳社会」に移行しているようにも思えるけど「自由洗脳競争」の”自由”の程度は低く、やっぱり「経済」の引力が大きいように思える。

1990年代~2010年代におけるパソコン・スマホ・タブレット・テレビ・ゲーム機などのデバイスや、各種ネット回線に代表されるデジタルネットワーク・サービスの普及はすごい勢いだった。

ただ、ネットに溢れる無数の情報を精査する技術・手段の大部分は依然としてマスメディア側に制御・管理されているので、洗脳社会を加速させる「洗脳装置」が開放された実感は薄い。

真の「自由洗脳社会」が到来するのは、難解で繊細で大量の情報を個人が他者の影響(検閲)を受けずに発信・公開し、受信・精査できる技術・手段が普及した時だと思う。

SFで考えると、「電脳化(攻殻機動隊みたいな)」だとハード/ソフトウェア的にも企業の干渉から逃れられないでしょうから、「ニュータイプ(機動戦士ガンダム)」が一番近いかもしれませんなあ。

まとめ

4

『ぼくたちの洗脳社会』は「洗脳」というユニークな思考を元にした内容で刺激的でした。

「実際のところどうなのか?」というような論の妥当性・正当性・実現性よりも、思考の切り口・光の当て方・経路を面白がるのが楽しむコツだと思います。

カバー裏側の隠しあとがき

ブックカバーの裏側には、短いですが文庫版のあとがきが隠されているのでチェックです。

電子書籍化されていないので、中古で入手するか、図書館で探してみるといいかもしれません。

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