
森博嗣の長編ミステリー小説『オメガ城の惨劇』の読書感想・レビュー記事です。
孤島に聳える城に招待された六人の天才と一人の記者。招待客の一人はサイカワ・ソウヘイ、招待状にはマガタ・シキの名が記されていた。
基本情報
タイトル | オメガ城の惨劇 SAIKAWA Sohei’s Last Case |
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著者 | 森博嗣 |
初出 | 2022年 |
ジャンル | ミステリー、推理 |
キーワード | クローズド・サークル、孤島、サスペンス |
作品概要
『オメガ城の惨劇』は、森博嗣の長編ミステリー小説。初出は2022年。
ジャンルは、ミステリー&推理。サスペンスやアクション要素も含まれる。
外界から隔絶された孤島「オメガ城」で起きる事件が描かれるクローズド・サークルもの。


「SAIKAWA Sohei’s Last Case(犀川創平、最後の事件)」ということで、シリーズファンは見逃せないかも!?
あらすじ
「F」の衝撃、再び
出典:『オメガ城の惨劇 SAIKAWA Sohei’s Last Case』(森 博嗣):講談社ノベルス|講談社BOOK倶楽部
孤島に聳えるオメガ城への招待に応じた六人の天才と一人の雑誌記者。
そこには、サイカワ・ソウヘイも含まれていた。彼らが城へやってきた理由は、ただ一つ。招待状に記された「マガタ・シキ」の名前だった。
島へ渡るには、一日一便の連絡船を使用。帰りは、あらかじめ船を呼ぶ必要がある閉じた空間。執事すら主催者の顔を知らず、招待の意図は誰にもわからない。
謎が多い中の晩餐をしかし七人は大いに楽しんだ。
そして、深夜。高い叫び声のような音が響き、城は惨劇の場と化した。


森ミステリーシリーズの1作目『すべてがFになる』を予感させる、唆るあらすじです🤩
傾向・雰囲気
おもしろさ (知性、好奇心) | |
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たのしさ (娯楽、直感) | |
コミカル (陽気、軽快) | |
シリアス (陰鬱、厳重) | |
よみやすさ (文体、構成) | |
よみごたえ (長さ、濃さ) |
単品作品としては、広義のミステリー、狭義の推理小説としての”お楽しみ要素”がふんだんに盛り込まれている。
惨劇(殺人事件)が描かれるが、”グロい”や”エグい”って感じの重苦しいシリアス成分は控えめ。
本作の趣向ではっきりしているのは、関連をもつシリーズ作品『S&Mシリーズ』『Vシリーズ』などのファン向けであるという点。
本作には各シリーズ作品のネタバレとなるような内容が含まれているので、少なくとも前述の2シリーズの後に読んだほうが楽しめると思う。


舞台ギミック、トリック、シリーズキャラクター、掛け合い、森節…、てんこ盛りな娯楽作という印象でした。
感想・考察


大仰さと慎ましさ
これ見よがしな舞台で起きる事件の大仰さと、生存者たちの対応の慎ましさのコントラストが印象的だった。
孤島での事件が描かれる第三章までは、ピリピリ緊張でもなければ、ユルユル弛緩でもない、不思議な雰囲気。
油断もしないが、パニックにもならない、慌てず騒がず情報を集め、冷静で無難に対応する。
「外界から隔絶された孤島に聳える城」という舞台は、ミステリーのギミックとして芝居がかって出来すぎている。何か起きることが予見できるし、起きてくれないと困る。だけど、それだけじゃつまらない。
「その点はわかっていますよ」と言わんばかりに、過去の名作(『黒後家蜘蛛の会』『そして誰もいなくなった』)が引き合いに出され、トリックのヒントにもなっていた。
シュールな趣があった。
してやられた😆
対推理小説モードで読んでいたが、彼の人の正体は4章まで見抜けなかった。
語りはミヤチ・ノエミ(記者)の一人称、「母は父を愛している」というフレーズ、記号化された名称。
警戒していたけど、してやられた。マガタ・シキによるミスリードも効いていたんだろうなあ。
先入観に基づくトリックは他のシリーズ作品でも前例があるけど、今度は本の副題まで利用してきたか!
事件の謎はもちろんだが、シリーズキャラクターの謎の方にも意識が向いていたのも大きいか。
推理小説は、謎解きも面白いが、騙されるのも楽しいね。
最後の事件
名称(名前)は、対象を識別するための記号だ。
今回の事件は、語り手であるミヤチ・ノエミにとっての「”サイカワ・ソウヘイ”、最後の事件」になったのだろう。
年月が流れた
久しぶりに読んだ森ミステリーはなかなか面白かった。
夢中でシリーズ作品を読みふけっていた時の感じを少し思い出せたような。
S&Mシリーズから始まる関連シリーズ作品は、Xシリーズまで既読、Wシリーズ以降は未読。
Wシリーズ以降を読んでいないと分からないことも結構あるのかも?
- S&Mシリーズ(10作、1996年~)
- Vシリーズ(10作、1999年~)
- 百年シリーズ(3作、2000年~)
- 四季シリーズ(4作、2003年~)
- Gシリーズ(11作、2004年~)
- Xシリーズ(6作、2007年~)
まとめ
『オメガ城の惨劇』、楽しかったです。
森ミステリーのシリーズ作品&キャラクターが好きで、『犀川創平』『真賀田四季』の名前にピンとくる人は楽しみやすいかと思います。