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本・読書感想

【読書感想/レビュー】『グラーフ・ツェッペリン 夏の飛行』 著:高野史緒

4.0

高野史緒の中短編SF小説『グラーフ・ツェッペリン 夏の飛行』の読書感想・レビュー記事です。

時間と世界が入り混じる不思議な感覚を、テンポよく楽しめるSF作品でした(ネタバレはありません)。

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作品の基本情報

『グラーフ・ツェッペリン 夏の飛行』は、2018年にKindleSingleから出版された「高野史緒」の中短編SF小説。

  • タイトル:グラーフ・ツェッペリン 夏の飛行
  • 著者:高野史緒
  • 出版社:Amazon Publishing
  • 初版発行年:2018年
  • ページ数:50ページ
  • メディア:電子書籍(Kindle Single)
  • 価格:199円
  • ジャンル:SF、歴史、中編小説

2018年のSF短編を集めた短編集『年刊日本SF傑作選 おうむの夢と操り人形』にも収録されている。

1時間くらいでサクッと読める中~短編の青春SF小説です。

あらすじ

女子高校生・夏紀は、母親の生まれ故郷である土浦を訪れた。約90年前の1929年8月、当時、世界最大の飛行船だった「グラーフ・ツェッペリン号」は史上初の世界一周飛行の途中、ここ土浦にある霞ヶ浦海軍航空隊基地に寄港した。

ところが、夏紀には小学生の頃、祖母の葬儀のために来た当地で、確かに巨大な飛行船を見た記憶があった。

その話を聞いた従兄の登志夫は、量子コンピュータに接続した拡張現実装置を夏紀に装着させ、もう一度現れるはずのツェッペリン号を追跡しようとするが……

出典:グラーフ・ツェッペリン 夏の飛行 (Kindle Single) | 高野 史緒 | Kindleストア | Amazon

90年以上前の出来事を目撃した記憶を持つ主人公「夏紀」は、量子コンピュータに接続されたAR(拡張現実装置)ゴーグル&グローブを装着。過去の町並みを再現しながら「グラーフ・ツェッペリン」を追いかけます!

感想(ネタバレなし)

1929年8月、霞ヶ浦航空隊基地に来た「LZ127 Graf Zeppelin」

あからさまなネタバレはありませんが、推測は可能かもしれないので、気になる方はご注意を。

「主人公はなぜ90年以上前のありえない記憶を持っているのか?」という謎をベースに、時間の流れやその繋がりについて、可能性に満ちた刺激的なお話になっていて楽しかった。

量子コンピュータを用いて記憶・記録の断片を処理・統合して過去を再現・反映するという拡張現実技術はすごく魅力的。

特に、ある人が実際に見て感じた情景まで再現できるとしたら、良くも悪くも素晴らしいだろうなあ。

拡張現実から派生・或いは延長線上に存在するかもしれない様々な現象については、「可能性が否定できない」という作中の台詞が味噌になっていると思う。

(この本が出版された2018年時点では)量子化学など研究・開発途上の未知があるからこそ、楽しい想像が可能な余地が残されている。

作中のAR描写にはアニメ「電脳コイル」を連想しました。その先の現象は「攻殻機動隊」の”ネット”に通じるような気も。
大正・昭和初期も生きた祖父母の記憶をもしも追体験できるとしたら…、ちょっぴり怖いけど興味津々!

まとめ

4.0

『グラーフ・ツェッペリン 夏の飛行』は、ノスタルジーと未来の多様な可能性を予感させてくれる楽しいSF小説でした。

長すぎず短すぎず、テンポよく読めるので、内容も相まって読後感も良かったです。

(2019年9月確認時)この本は、AmazonプライムKindle Unlmitedの読み放題対象作品になっています。

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