森博嗣の連作短編集『ZOKUDAM』の読書感想・紹介・レビュー記事です。
Zシリーズ第二弾は、巨大人型ロボットと怪獣!…、の決戦が実現するまでの準備を楽しく緩く描いたお話。
基本情報
- タイトル:ZOKUDAM
- 著者:森博嗣
- 出版社:光文社
- 初版発行年:2007年
- ページ数:344(ノベルス版)
- 価格:605円(Kindle版)
- キーワード:小説、短編集、科学、ロボット、パロディ、コメディ
どんな本?
『ZOKUDAM』は、5つの連作短編が収録されている「Zシリーズ」全3作の2作目。著者は森博嗣、初版の発行は2007年。
登場人物は前作『ZOKU』と共通しているが、設定は変わっている。
どんなお話?
ロミ・品川とケン・十河は、遊園地の地下にある部署に配属され、ロボットのパイロットとして怪獣と戦う任務を任された。その部署の扉には【ZOKUDAM】の文字。
一方、永良野乃と揖斐純弥は、謎の組織【TAIGON】の元、ロボット怪獣を使って社会に迷惑が掛かり過ぎない程度の世界征服を計画していた。
戦えゾクダム!敵の怪獣をやっつけろ!しかし、物事には準備が必要なのだった…
基本的なノリはシリーズ前作『ZOKU』と同じ。ただし、今回は「正義と悪の戦いが実現するまでの準備」が、お話の主体となっている。
ロミとケンがロボットの操縦法や仕様を学んでいく視点を中心にお話が展開。うんざりするほど分厚いマニュアルを読み重ね、ロボットの各機能の調整・問題点の修正・テストを繰り返し、遅れに遅れた予定がついに立ったと思ったら解体・輸送・搬入・組み立て・整備と大忙し、決戦の地で怪獣との対戦が実現するまでの試練が描かれる。この前日譚が主題なのだ!
前作とはストーリー的な繋がりがないので未読でも不都合はないだろうが、空気感を楽しむ上では読んでおいたほうがより楽しみやすいと思う。
ロボットもの作品の裏舞台、普通ならスポットライトが当たらない地味な部分の華を描いているような。
『機動戦士ガンダム』や『機動警察パトレイバー』で考えてみると、あれをまともに運用するには凄まじい困難が待ち受けていそう。下準備の手続きだけで気が遠くなりそうだなあ(ノ∀`)アチャー
ざっくり方向性
おもしろさ (知的/興味深い) | |
たのしさ (直感/娯楽性) | |
あかるさ (テーマ/雰囲気) | |
よみやすさ (文体/言葉選び) | |
よみごたえ (文量/情報量) |
森博嗣っぽいユーモア成分はたっぷりなので、面白さ・楽しさはファンなら文句なしだと思われる。
読みやすさは短編らしく良好。1話でしっかり落ちるわけではないけど、話としては一応まとまっている。
読み応えは全体的に軽いテイストなのであまりないと思う。ゆる~く脱力感を楽しみましょう。
あまり真面目に読んじゃうと肩透かしを食らうと思うので、お笑いコントを観るみたいな感じで向き合うとちょうどいいかもしれません 😉
ロボットものとか興味がなくても、2組のカップルの掛け合いもそれなりに楽しいかもしれないので、まあ読めると思います。
パロディ
「でもですね、たしかに、日本の悪の組織って、世界征服を謳いながらも、東京近郊の埋め立て地とか、港の倉庫とか、山の中の採掘現場とかにしか現れませんし、しかも、だいたいは殺戮者を一人ずつしか送り込んできませんよね」
「ああ、そうそう……。外国だったら同時多発の作戦で来るね。戦略的には当たり前だもの」出典:森博嗣|ZOKUDAM|第三話|光文社
引用箇所は、第三話でロミとケンが、悪の組織の妙なところを指摘してやりとりする場面。
正義の味方に活躍してもらうためには多くの”お約束”が必要。
- 世界征服なのに日本の限られた地域にばかり来る
- 戦力を逐次投入して各個撃破される
- 機密情報を漏らす(自分の能力を説明したり)
- ヒーローの隙きを突かない(名乗り口上・変身)
あるあるネタのパロディも散りばめられています。
クラタス
ZOKUDAMとはあまり関係ないけどちょっと面白かったロボットネタ。
人が乗り込んで操縦する人型ロボットの『クラタス(KURATAS)』。
ネタ成分強めの「トイロボット(おもちゃ)」という位置付けで、全長12mのゾクダムとはコンセプトも違うのだけど、これも面白い!
人型ロボで公道を走れるってのは浪漫がありますなあ。
腕が付いていない状態のスターターキットを1億2千万円で売り出していたこともあるんだそうで(≧∇≦)b
まとめ
総じて”薄い”のですけど、読み物としては、脱力したまま軽く楽しめるので、これはこれで良いなと思いました。雰囲気を緩く楽しむものって感じでした。
しっかり濃い読書体験をしたいとか、感動したいなんて場合には全く向かないと思うのでご注意を。ロボットものエンタメ作品が好きな人ならきっとニヤリとできるはず!