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本・読書感想

【読書感想/紹介】ミステリー中短編集『法月綸太郎の消息』 著:法月綸太郎

4.0

4.0

法月綸太郎のミステリー小説『法月綸太郎の消息』の読書感想・紹介・レビュー記事です。

シャーロック・ホームズ作品/エルキュール・ポアロ作品の謎に迫る2編、法月親子が自宅でしっぽり事件を推理する安楽椅子探偵もの2編、の計4編が収録された中短編集となっています。

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基本情報

  • タイトル:法月綸太郎の消息
  • 著者:法月綸太郎
  • 出版社:講談社
  • 初版発行年:2019年
  • ページ数:283(単行本)
  • 価格:1,540円(Kindle版)
  • ジャンル:ミステリー、探偵、推理
法月 綸太郎: books, biography, latest update
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どんな本?

著者と同名の探偵作家「法月綸太郎」が登場するミステリー小説。2020年時点では法月綸太郎シリーズの最新作。

4つの短編(内一つは少し長めの中短編)が収録されている。

シリーズ1作目「雪密室(1989年)」から30年となる作品だそうです。

目次

  1. 白面のたてがみ
    • シャーロック・ホームズに関する謎に綸太郎が挑む
    • 白面の兵士+ライオンのたてがみ
  2. あべこべの遺書
    • 遺書と現場が入れ替わっている2件の不審死事件
    • 親父さん(法月警視)は息子綸太郎の知恵を借りる
    • 安楽椅子探偵もの
  3. 殺さぬ先の自首
    • まだ起きていない殺人事件で自首してきた男
    • 親父さんからの話を聞いて綸太郎が推理を巡らせる
    • 安楽椅子探偵もの
  4. カーテンコール
    • エルキュール・ポアロの最後について綸太郎たちが議論を交わす
    • ポアロシリーズのネタバレが複数含まれる
    • 他3編より少し長め

ざっくり方向性

おもしろさ
(知的/興味深い)
4.0
たのしさ
(直感/娯楽性)
4.0
あかるさ
(テーマ/雰囲気)
4.0
よみやすさ
(文体/言葉選び)
3.0
ながさ
(文量/情報量)
3.0

人が死ぬ事件を取り扱う短編2つを含むけれど、全体の雰囲気は軽くて楽しい感じ。

第二章『あべこべの遺書』と第三章『殺さぬ先の自首』は、法月親子が自宅で推理を展開する”安楽椅子探偵”もので、限られた情報の中で綸太郎が推理を進めていく過程が面白くて読みやすい作品。

逆に、第一章『白面のたてがみ』と第四章『カーテンコール』は、コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」、アガサ・クリスティの「エルキュール・ポアロ」シリーズの濃い話となっている。両作品のファンで、且つ一定以上の予備知識がない場合は、読むのがちょっとしんどいかもしれない。

法月綸太郎シリーズでは「親父(警視)+息子(探偵作家)」がタッグを組んだ話が好きです。

ネタバレ有りの感想

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ネタバレが含まれるのでご注意ください。

第一章『白面のたてがみ』

第一章では、シャーロック・ホームズ作品の謎(白面の兵士+ライオンのたてがみ)を、作者コナン・ドイルの思想にも触れながら綸太郎が紐解く。

作品のテーマであるシャーロック・ホームズ作品に深い興味がないと楽しむのは難しいように思えた。個人的にはピンとこなかったな。難しいなあ、シャーロキアンなら楽しめるのかな?

第二章と第三章

第二章『あべこべの遺書』と第三章『殺さぬ先の自首』は、法月親子が自宅で事件の話をする安楽椅子探偵もの。例によって親父さんが綸太郎に事件の相談を持ちかける。

親父さんは、情報を小出しにして綸太郎に推理させることで、捜査での見落としを再検証し事件解決の糸口を見つけ出そうとする。

話が進む過程で事件の情報が更新され(親父さんが少しずつ情報公開する)、その度に綸太郎の推理も変わっていく。法月家の縁者の一人になったつもりで、もう一人の探偵役として一緒に推理しながら読み進めると楽しい。

どちらも事件の結末は明かされない。限られた情報から様々な可能生を推理すること自体が味噌だと思うので、このゆるさは良かったと思う。本書の”楽しい”は、この2編。

第四章『カーテンコール』

第四章『カーテンコール』は、アガサ・クリスティのエルキュール・ポアロシリーズ最終作『カーテン』の謎について、綸太郎とロザムンド山崎たちが議論を交わす。面白かった!

『カーテン』で死んだポアロが、実は「エルキュール・ポアロ」ではなくて、双子の兄「アシル・ポアロ」である可能生について論じられている。

  • エルキュール(フランス語)=ヘラクレス(英語)
  • アシル(フランス語)=アキレス(英語)

ポアロシリーズは原作もそれなりに読んだことがあるので興味深かった。デヴィッド・スーシェ版のドラマ『名探偵ポワロ』シリーズへの言及もあって惹きつけられる!

最終作だが1943年に執筆されていた『カーテン』での「ポアロの死」の意味を変える意図が、43年以降に執筆されたポアロシリーズにはある、という切り口。双子の兄アシルが存在する可能生や、双子の入れ替わりを示唆するギリシャ神話についての話も面白かった。

綸太郎が出す結論は、色々こねくり回した末のものであくまでも「解釈の一つ」といった感じだけど、あーでもないこーでないと想像の余地を埋めていくところは良かった。

あと、登場人物や設定のパロディが楽しかった。こんな感じかな?

  • 新堀右史:三谷幸喜
    • 『警部補・判藤幾三郎』:『警部補・古畑任三郎』
  • ロザムンド山崎:マツコ・デラックス
  • 細川畝明:相島一之

三谷幸喜、マツコ・デラックス、相島一之と卓を囲んでポアロ談義に白熱というか、花を咲かせる…。すごい楽しそう!

まとめ

4.0

シャーロック・ホームズやエルキュール・ポアロに興味がないと入り込みにくい作品が4編中2編なので、ちょっと癖の強い作品だと思います。

しかし、推理の思考経路がしっかりと描かれていて、ミステリーとしての読み応えは充分だと思います。楽しめました(≧∇≦)b

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