森博嗣の連作短編集『ZOKURANGER』の読書感想・紹介・レビュー記事です。
ますます不思議になったZシリーズの3作目は、想像が炸裂する戦隊ヒーローものパロディ!
基本情報
- タイトル:ZOKURANGER
- 著者:森博嗣
- 出版社:光文社
- 初版発行年:2009年
- ページ数:250(文庫版)
- 価格:605円(Kindle版)
- キーワード:ミステリー、パロディ、コメディ、SF
どんな本?
『ZOKURANGER』は5つの連作短編が収録された森博嗣のパロディ小説。Zシリーズ(全3作)の3作目で、初版は2009年に発表。
Zシリーズ共通の登場人物が本作でも登場するが、キャラクター設定が変わっている(職業・所属・能力・年齢・人間関係など。性格は一部違うけど大体同じ)。
ストーリー的には過去作と繋がりがないため、3作目である本作から読んでも支障はない。
本作が何をパロディしているかと言えば、タイトルを見てわかるとおり「戦隊ヒーローもの」となっている。『秘密戦隊ゴレンジャー』とかのアレですね。
Wikipediaの記事を読んで驚いたのですが、ゴレンジャーの世界設定って思った以上に作り込まれているんですね(記事のボリュームもすごい!)。
ゴレンジャーの隊員は、世界征服を企む悪の組織『黒十字軍』と、戦っている国際秘密防衛機構『イーグル』の日本ブロックの各支部から集まったメンバーで構成されているんだそうで。
『超獣戦隊ライブマン』~『忍者戦隊カクレンジャー』あたりはリアルタイムで見てました。懐かしいなあ(内容はほぼ忘却)。
おはなしの流れ
着任早々「研究環境改善委員会」なる組織の委員を任されるが、一体何を目的とした組織なのか活動の実態が見えてこない。
ほどなくして、同じ研究環境委員会のメンバーで助教授の永良野乃から体のサイズを測らせて欲しいと頼まれて困惑!委員会の活動でユニフォームが必要らしいのだが…。
本作の舞台は大学。主要な登場人物は大学の教員となっている。
「ロミ・品川、永良野乃、ケン・十河、バーブ斎藤、揖斐純也、木曽川大安、黒古葉善蔵、庄内承子」。おなじみの面子が他シリーズとは少し違う設定で登場。
大学での研究生活の内幕や、一般社会の常識が通じない不思議なところを、「登場人物たちの想像」&「モチーフの戦隊ヒーローネタ」を混じえながらコメディタッチに描いている。
”ほんのり”となんですがSF的な要素も含まれています。超人的でもなく並外れてもいない超能力みたいな 😉
収録話
- Part1:Yellow disloyalty
- 第1話「黄色の背信」
- イエロー担当:ロミ・品川
- Part2:Pink excitation
- 第2話「桃色の励起」
- ピンク担当:永良野乃
- Part3:Blue idleness
- 第3話「青色の有閑」
- ブルー担当:ケン・十河
- Part4:Green persona
- 第4話「緑色の位格」
- グリーン担当:バーブ・斎藤
- Part5:Red investigation
- 第5話「赤色の研究」
- レッド担当:揖斐純弥
収録されている短編5話はそれぞれ、「ロミ・品川」、「永良野乃」、「ケン・十河」、「バーブ斎藤」、「揖斐純也」の視点で描かれる。
ロミ・品川が大学に新任准教授として赴任するところからお話が始まります。
ざっくり方向性
おもしろさ (知的/興味深い) | |
たのしさ (直感/娯楽性) | |
あかるさ (テーマ/雰囲気) | |
よみやすさ (文体/言葉選び) | |
よみごたえ (文量/情報量) |
『ZOKURANGER』は、1作目『ZOKU』と2作目『ZOKUDAM』に比べると、面白さ・楽しさはちょっと弱かった。戦隊ヒーローのパロディと大学社会の不思議が、あまり上手く関連付けできていないような。
大学の機能を円滑に回すために必要な諸々の雑事や苦労と似たような問題を、5人が集う必要がある(ヒーローとしては大所帯な)戦隊ヒーローのフォーマットでもっと濃くパロディできていたらな、と思ったり。ちょっと大学側成分が強すぎた印象。
短編1つあたりのページ数は、新書基準だと1話あたり50~60。全体の書き方も平易な文章なので、総じて読みやすい本だと思う。
Zシリーズは通して「ゆるふわ」でした。
本を読んだあと余韻は強くありませんでした。物語の空気に当てられて、しばらく想像の世界から抜け出せないようなあの感覚。この軽さも良しだとは思いますが。
まとめ
シリーズ前2作に比べるといまひとつでしたが、わりと楽しく読むことができました。
Zシリーズファンなら、主要な登場人物5人「ロミ・品川、ケン・十河、バーブ斎藤、揖斐純也、永良野乃」が、3作目のパラレルワールドでどんな事になっているのかを見られるだけも面白いと思います。
消化の良い薄味で軽い小説を楽しみたい時にはぴったりなんじゃないでしょうか。