星新一の短編集『きまぐれロボット』の読書感想・紹介・レビュー記事です。
博士、ロボット、宇宙人、不思議発明などが登場する36編のショートショートが収録。SFでミステリーなゆるい騒動が巻き起こる!?
作品情報
タイトル | きまぐれロボット (角川文庫 文庫版) |
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著者 | 星新一 |
出版社 | 角川 |
初出 | 1972年 (※角川文庫版は2006年) |
ページ数 | 215 |
価格 | 337円(Kindle版) |
キーワード | 短編小説、ショートショート、SF、ロボット、ミステリー、童話、寓話 |
作品概要
『きまぐれロボット』は、1編あたり3~4ページ(1000~1500文字)程度のショートショート集(超短編集)。収録作品数は36編。
ジャンルは広義のSFやミステリー。ロボットや宇宙人、博士などが登場する話が多い。構成・表現が全体的にやさしく分かりやすい作品が多く、子供も楽しめる”不思議SF童話”といった風情。
星新一の公式サイトにある初出データによると、本作に収録されている作品の初出は、大体1960年代となっていた。なかなかに古典!
方向性
おもしろさ (知性・好奇心) | |
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たのしさ (直感・娯楽) | |
ふんいき (←シリアス/コミカル→) | |
よみやすさ (文体・構成) | |
よみごたえ (文量・濃さ) |
たいていの作品は「ほのぼの」って感じで低刺激です。一方でコメディ・ミステリー・ホラー・サスペンスなどの要素を含んだ作品もありました。
感想・考察
洗練されたお話
物語の背景となる舞台や登場人物の描写が必要最小限で、洗練されているのが印象的だった。
登場人物の名前は識別のための記号でしかない「エス」「ケイ」「アール」などの匿名イニシャル。容姿や性別も不明。宇宙人やロボットのキャラクターとしての描写も最小限でタンパク。
それでもなんだかぼんやりと舞台や登場人物のイメージを想像できるのが面白かった。脳内で補完が必要な要素が少ない分、核心のイメージが掴みやすいのかも。もしくは想像の自由度が上がる?
落ちのあっさりさ
お話の落ちがあっさりしていた。
「その後どうなったのか」が描かれないので、結末というほど結ばれていないし、落ちというほど落ちていない話が多かった。投げっぱなし!
ミステリー風な作品には「少し意外」程度の種明かしがあるけれど、「アッと驚く」でもなければ、「なるほど納得」でもない、ゆるゆる脱力な終わり方。
少ない文字数でお話を組み上げるために、必須要素以外を削ぎ落としていった結果なのかな?「くどくない(濁りのない澄んだ感じ)」という見方もできるので、この「あっさり」は魅力なのかも。
書いてみようとする
自分でも不思議SF童話なショートショートを書いてみようと思ったが、上手く書けなかった。
1000文字程度の短さ、一般的且つ容易な表現、突飛なオチが不要、でなら書けるかもと思って試してみたが意外に難しかった。
簡潔に書こうとしても、発想の過程で「SF、ロボット、ミステリー、サスペンス、etc…」と種々の雑念がいくつも湧いてきてまとまらない。シンプルに書こうとしても濁ってしまう。
少なくとも、温い覚悟と準備で読める代物をすらすら書けるわけではないみたい。あるいは、畏まって持って回った表現なんかを使おうとするのがいけなかったのかもしれない。
まとめ
これまでに読んだことのある星新一作品は、ミステリーやサスペンスの傾向が強かったので、『きまぐれロボット』の”ほのぼの”感はちょっぴり新鮮でした。
取り立てて面白いって感じではありませんでしたが、気楽にぼんやりとした話を短時間で楽しみたい場合には良いかと思います。