SFアニメ『銀河英雄伝説 外伝 千億の星、千億の光』のレビュー・感想記事です。
基本情報
タイトル | 銀河英雄伝説 外伝 千億の星、千億の光 |
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発表年 | 1998年 |
製作国 | 日本 |
長さ | 27分×12本 |
ジャンル | SF、スペースオペラ、群像劇 |
作品概要
『銀河英雄伝説 外伝』は、本伝以前のラインハルトやヤンを描いた前日譚。
『千億の星、千億の光』では、銀河帝国軍の同盟領侵攻作戦によるヴァンフリート星域での戦いに始まり、自由惑星同盟軍の攻撃による第六次イゼルローン攻防戦の収束までに至る、一連の戦いと英雄たちの人間模様が描かれる。
帝国と同盟の双方向から多数のキャラクターが登場して描かれるストーリーだが、主にラインハルト、リューネブルク、シェーンコップの視点で展開していく。
あらすじ
准将に昇進したラインハルトは、司令官グリンメルスハウゼン中将が率いる艦隊の分艦隊司令として、同盟領侵攻作戦に参加していた。
司令官グリンメルスハウゼンは、皇帝との交友関係によって過分な地位を与えられた高齢の老人で、艦隊指揮能力にも欠けることから、軍部に疎まれていた。
ヴァンフリート星域で砲火を交える両軍だったが、通信状態の悪さと愚策によって、戦闘は膠着状態に陥る。ラインハルトも行動を縛られて武勲の機会を得られないままだった。
その後、グリンメルスハウゼン艦隊は、ヴァンフリート星域の惑星にある衛星の一つに仮設基地を設置して駐屯することを総司令部から命じられる。
それは、彼らを戦線から遠ざけるための厄介払いだった。しかし、その衛星には同盟軍の後方補給基地が設置されていたのだった…。
方向性
おもしろさ (知性・好奇心) | |
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たのしさ (直感・娯楽) | |
ふんいき (シリアス↔コミカル) | |
むずかしさ (平易↔難解) | |
みごたえ (ライト↔ヘビー) |
評価
ストーリー | |
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キャラクター | |
イメージ | |
サウンド |
感想・考察
見応え満点
出典:銀河英雄伝説 外伝 千億の星、千億の光 第12話|(C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリー
内容が盛りだくさんで見応えがあり楽しかった。
モニターに映し出される艦隊陣形、丁々発止のキャラクターたち、俯瞰する解説、クラシックなBGM…、まさに銀英伝!
本伝を補完する小さなエピソードというより、銀河を股に掛ける大河ドラマの1編という感じだった。
ストーリー
ヴァンフリート星域における宇宙艦隊戦に始まり、衛星での陸戦、白兵戦。内地での権力闘争、宮廷闘争、平民の生活。そして、イゼルローン要塞を巡る攻防戦!
一連の戦いにおける一部始終がガッツリ描かれていた👍
キャラクター
登場キャラクターも一気に増えて賑やかになっていた。
帝国側ではケスラー、ミッターマイヤー、ロイエンタール、ビッテンフェルト、メルカッツ、ヒルダ等。同盟側はヤンを始めに、ビュコック、グリーンヒル(父)、シェーンコップ、キャゼルヌ、アッテンボロー、ポプラン等。
シェーンコップとリューネブルクの、ローゼンリッター新旧連隊長対決も熱かった。が、両者共に失ったものは大きかった。
SF要素
ヴァンフリート4=2での陸戦時に、スター・ウォーズのスピーダー的な宙に浮いた騎乗する感じの乗り物が登場していて目を引いた。
ヴァンフリート4=2に駐屯するにあたっての宇宙艦隊の停泊方法も凄かった。北極の氷を持続性核融合弾で溶かし、水の蒸発を防ぐために流体金属で覆って、艦艇を着水させる。サラッと説明されていたけど、とんでもないSFチックな方法だよなあ。
そしてやはり、イゼルローン要塞のトールハンマーが良い。防御不能の圧倒的な火力を誇る一撃必殺の超兵器。戦局を左右するギミックとして機能しているのも上手い。
ヤンの声が違う
出典:銀河英雄伝説 外伝 千億の星、千億の光 第10話|(C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリー
ヤン・ウェンリーの声が違うのに驚いた。
本伝でヤンを担当していた声優さんが亡くなったため、外伝では別の声優さんが担当したのだそう。
本伝のOVA第一期は1988年、外伝の第一期は1998年、10年以上掛けて作られた作品なので、そういうこともあるのだろう。声優界の歴史の1ページでもあるのか。
そういえば、外伝では、本伝で見かけなかったCGらしきシーンがちょくちょく出てきていた。コンピューターや操作パネルなどのデバイスも現代的(20年以上前の)になっていた。製作時の技術や世相が反映されているという面でも歴史を垣間見る1ページなのかも。
声の演技がキャラクターのイメージに与える影響の大きさを思い知らされた。僕の知ってるヤンじゃないけど、こういうヤンがいる世界もあるのだろう。
ラインハルトの本性
出典:銀河英雄伝説 外伝 千億の星、千億の光 第12話|(C) 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリー
戦いと犠牲を通して描かれるラインハルトの本性が気になった。
ラインハルトは、無益な犠牲を出さないようにするだろう、戦死者を軽んじることもないだろう。平民の命をただの数字としてしか見ていない腐敗した門閥貴族や高級軍人に比べれば高尚だ。
だが、自らの野心と勝利のために必要なら流血を厭わない。その意識は、味方の戦死者の事よりも、戦略家・戦術家としての勝利の質の方に向いていた。
ラインハルトが兵に求めるのは、他の支配者とさして変わらず、還元すると「私のために戦え。必要なら死ね」だ。彼の本性は、善良か邪悪かで言えば邪悪側に思える。
しかし、ずば抜けた才覚と高潔さと華麗さで、損害は小さく、勝利と支持は大きくなり、邪悪さは顕在しなかった。キルヒアイスは殉じ、アンネローゼは弟を突き話し、ヤンは気に病み、大衆は魅了された。
まとめ
SFでスペクタクルでドラマチックな話で面白かったです。