
スプラッターホラー映画『Pearl パール』を鑑賞しての感想(ネタバレ含む)。
- 2022年 / 102分 /アメリカ
- ホラー、スラッシャー、サイコパス、レトロ、グロ
- ホラー映画『X エックス』の前日譚(エックスが1作目、パールが2作目)
1918年、テキサス。
スクリーンの中で踊る華やかなスターに憧れるパールは、敬虔で厳しい母親と病気の父親と人里離れた農場に暮らす。若くして結婚した夫は戦争へ出征中、父親の世話と家畜たちの餌やりという繰り返しの日々に鬱屈としながら、農場の家畜たちを相手にミュージカルショーの真似事を行うのが、パールの束の間の幸せだった。
ある日、父親の薬を買いに町へ出かけ、母に内緒で映画を見たパールは、そこで映写技師に出会ったことから、いっそう外の世界への憧れが募っていく。そんな中、町で、地方を巡回するショーのオーディションがあることを聞きつけたパールは、オーディションへの参加を強く望むが、母親に「お前は一生農場から出られない」といさめられる。生まれてからずっと“籠の中”で育てられ、抑圧されてきたパールの狂気は暴発し、体を動かせない病気の父が見る前で、母親に火をつけるのだが……。
籠の中の鬼


パールは籠の中から出られなかった。
パールには、他者の苦痛や恐怖には無頓着な先天的残虐性(サイコパス)があった。
もしも家族や農場や社会に縛られない自由があったなら、パールはどうなっていたんだろうと想像した。あそこまで狂気が育つことはなかった?それとも、野に放たれて残虐性を遺憾なく発揮したのだろうか?
パールにある程度の自由があったらどうなっていたのかを前作『X エックス』のマキシーンが演じているのかも?
パールとマキシーンの類似点から、両者の血縁を想像したりもした。マキシーンは、実はパールの孫だったりして。
ともあれ、狭い籠の中で狂気を熟成させた結果が『X エックス』でのパールだった。
呪詛


前作『X エックス』のラストあたりでパールがマキシーンに放つ呪詛が印象的だったが、あの呪いの言葉も狂気も母親譲りだった。伝道師であるマキシーンの父に重なるイメージ。
ルース(パールの母)は言う、
知ってるわ、あなたが1人で何してるかも、私は見ていた。気づかないと思った?本性は隠せ通せないのよ。いつかは気づかれ、みんなが恐れる。――私のように。
罰当たりなことばかりして!あなたは病気なのよ、パール。いずれ誰かを傷つける。
あんたの心は悪に蝕まれているの、私の良心にかけて農場から出さないわ。
毎日、夫に食事をさせ鼻水を拭く私に、よくも後悔を説けるわね!私は彼の妻よ、母親じゃない!二度と私にそんな口をきかないで!
(オーディションに)行きたければどうぞ。不合格なら…、絶対そうだけど、その気持を覚えておいて、私がお前を見るたびに味わう気持ちだから。
ルースは、辺境の片田舎で体の不自由な夫の介護をしながら老いさらばえていく。パールは、そんな母親のようになりたくないと言うのだが…、なっちゃうんだよなあ。
自分で選ぶことのできない”誕生ガチャ”による性質・能力・環境というのは、本当に恐ろしい解けない呪いだ。
聞いてないで早く逃げろおおお!


ってジリジリしていた。
映写技師やミッツィー(ハワードの妹)は、パールの語りが始まって「あれ、なんかこいつおかしいぞ」って気付いているのに、心理的に「全力で逃げる」を選択できずに殺られてしまう。
あのジリジリする感じの焦れったさが良かった。
自分が似たような状況に置かれても、正常性バイアスが働いて冷静かつ迅速な判断はできないかも、と思った。ヤバいと思ったら、なりふりかまわず全力で逃げる!これ大事!
ハワード逃げてー!


と、前作『X エックス』より先に『Pearl パール』を観てしまった自分は思っていた。
前作見ていたら当然分かることだが、ハワードは生存者。彼がパールに殺されなかったのは、サイコ適性があったのか、それ以上の愛によるものだったのか、定かではない。
記事中画像の出典:Pearl パール © 2022 ORIGIN PICTURE SHOW LLC. ALL RIGHTS RESERVED.