森博嗣のエッセイ『つぶやきのクリーム』の読書感想・紹介記事です。
森先生による「100の呟き(とその補足・解説文)」が収録された面白くて読みやすいエッセイ本です。
基本情報
- タイトル:つぶやきのクリーム
- サブタイトル:The cream of the notes
- 著者:森博嗣
- 出版社:講談社
- 初版発行年:2012年
- ページ数:240(文庫版)
- 価格:524円
- ジャンル:エッセイ、随筆
『つぶやきのクリーム』は、2020年8月時点で全8作品ある”クリームシリーズ”の1作目です。
どんな本?
『すべてがFになる』などのミステリー小説シリーズで知られる「森 博嗣」が書いた2012年出版のエッセイ本です。
森先生が発想した「つぶやき」に、補足的な文章・解説が付け加えられたものが、100本収録されています。
1つあたりの「つぶやき」は、文庫本で2ページ程度(1000文字以下)の分量となっていて読みやすいです。本全体でも240ページと短めです。
おもしろさ (知的/興味深い) | |
たのしさ (直感/娯楽性) | |
あかるさ (テーマ/雰囲気) | |
よみやすさ (文体/言葉選び) | |
ながさ (文量/情報量) |
つぶやきのジャンルは特に限定されていなくて、普遍的なテーマが多いです。内容も抽象的に書かれているため、2020年に再読してみても興味深い内容となっています。
「なるほどっ!」と思わされるものや、「ぐぬぬ」って唸らされるような鋭い考察、「いやいや、先生…」とツッコミを入れたくなようなものまで、意外と自由に書かれていて面白いです。
「なるほど!」な、つぶやき
79 本当のプライドを持っている人は、プライドを懸けたりしない。
プライドというのは、自身に対してホコリを持つことだ。しかし、それを表に出すことではない。つまり、周囲に自分を誇ること(自慢)ではない。日本語では自尊、自負という言葉が多分近いだろう。ようするに、誇る相手は他者ではなく自分なのである。
出典:森博嗣 |つぶやきのクリーム|182p|講談社
上記引用は、79番目のつぶやきにある一節。
「プライド」というのは「自尊・自負」のような、内向的なものであるという考えに「なるほど!」となりました。
日常的に遭遇する面倒くささの一つに、何をするにもまずは他者からの(空虚な)承認や(実態のない)尊敬を示されないと不機嫌になったり怒り出す人の存在があります。
私は、そういう人に対して周囲が「あの人はプライドが高いのよ」みたいな事を言ってるのを聞くと、「それはプライドじゃなくて傲慢や虚栄心でしょ」みたいに思うわけです。
その結論にある程度は納得していたのですが、前述した「プライドは内向」という考えを組み込んでみると、考えがよりまとまってしっくりくるようになりました。
その他、「なるほど!」だったつぶやき。
- 7:土地に縛られているのは個人ではなく、集団である。
- 82:偉いというのは、偉い場所を探して移動したのではなく、自分のいた場所が隆起して、あるいは周りが陥没して、偉くなったのである。
- 86:正直者が馬鹿を見るのは、その正直者が馬鹿だった場合だけだ。
断片的ではあるんですけど、賢者の思考の一部を自分の中に取り込める感じが(・∀・)イイ!!
「刺さる!」な、つぶやき
75 世の中、「こいつ何様のつもりだ?」という奴が多いが、たいてい無害だからよろしい。
評論家口調で、「これはおすすめできない」と書いている人は、自分がすすめるものにどれくらいの自信があるのだろう。どの程度の責任を感じているだろう。おそらく、何も考えていないにちがいない。それゆえ、無害といえば無害である。
出典:森博嗣 |つぶやきのクリーム|175p|講談社
上記引用は、75番目のつぶやきの締め部分。
インターネットの普及で「普通の人」でも容易に情報発信ができるようになったことに絡めて、偉そうな口調で文章を書く者を、鋭く評価している。
それこそ、当記事もレビュー(評価)記事であります。もし、森先生に「君は自分の記事で評価している事にどれくらいの自信と責任をもっているんだい?」と問われたら…。
「ドキッ」とか「ギクッ」いうのを通り越して「グサリ」と刺さるように思えるのは、まだまだ色々なものが足りないって事なんでしょう。
私は、ブログ記事を書き終わって投稿する際に、公開ボタンを押すのをいつも躊躇します。「この表現で、この内容で、いいのか?」といった具合に考えてしまいます。
そして、腹をくくって公開した後も落ち着かなくて、結局どこかしら書き直します。特に件のレビュー記事なんかは、そういうことが多いです。
でも、結局疲れてしまって書き直すのを諦めたり、放置してしまう事も珍しくないので、書き方や内容を高めて、「単に無害」ではない「ちょっとは何かしらの影響があるような」記事を書けるようになりたいです。
その他、「刺さる!」なつぶやき。
- 68:気持ちを切り換えろというが、気持ちなんてものはどうだって良いから、次の手を打ちなさい。
- 93:人間なんだから、自分らしくないこともしなければ。
森エッセイは痛いところも突いてくるので油断できません。まあ、そこも気に入ってるんですけど。
優しいような厳しいような、よくわかんない感じも好きです。
まとめ
本書は、内容はもちろん面白いのですが、ちょっとしたスキマ時間に読みやすい&頭に入ってきやすい点も良いところだと思います。
思考の巡りが悪くなってきて、脳細胞に刺激が欲しくなった時なんかに良いかもしれません。ツイッターじゃないですけど、森博嗣のよりぬきツイートみたいな?