森博嗣のショートエッセイ集『追懐のコヨーテ』の読書感想・レビュー記事です。
世事の不条理を穿つ「なるほど!」な理性的おもしろエッセイ!100篇のショートエッセイが収録された2021年の作品です。
基本情報
タイトル | 追懐のコヨーテ The cream of the notes 10 |
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著者 | 森博嗣 |
初出 | 2021年 |
ジャンル | エッセイ |
キーワード | 哲学、言論、思想、思索、社会、人生 |
作品概要
『追懐のコヨーテ』は、2021年に発表された森博嗣のショートエッセイ集。1年に1作出版される「クリームシリーズ」の10作目。
ショートエッセイ1篇あたりの長さは、紙書籍での見開き2ページ分くらい。それが100篇収録されている。
エッセイの内容は、著者の日常生活や趣味の他、社会情勢、哲学的なことなど幅広い。「理性」や「論理」を主軸とした考えが主体で、「感情」や「直感」のような情緒的内容は控えめ。
社会、人、慣習が発する矛盾や不合理に対する冷徹な”ツッコミ”が特徴です。毎度面白い👍
傾向・雰囲気
おもしろさ (知性、好奇心) | |
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たのしさ (娯楽、直感) | |
コミカル (陽気、軽快) | |
シリアス (陰鬱、厳重) | |
よみやすさ (文体・構成) | |
よみごたえ (文量・濃さ) |
大部分はいつ読んでも面白がれるであろう抽象的な内容です。
時事ネタである新型コロナウイルスやオリンピックの事にも少し触れられていました。
感想・考察
意味を失った言葉
「言葉(文句)」に関する篇が印象に残った。
「元気」「理由」「持続可能」などが取り上げられていた。本来の意味が歪められ、形骸化した言葉の多いこと。
自分の生活の中で比較的よくあるのは「慇懃無礼」だ。上辺だけ丁寧な形式を用いるが、肝心の「礼」が存在しない言動と接する事が多い。
表面だけ取り繕って相手の負担や迷惑を顧みなかったり、「謝ればいいや(謝罪したからいいだろ)」などと問題を防ぐための努力を放棄して失敗前提で行動したりする輩は厄介だ。
歪んだ解釈
上辺だけの言葉がもつ不合理について「屁理屈」という切り口で語られた29篇と、その不合理を冷静に指摘することを「憎まれ口」の視点で考察した84篇も面白かった。
根拠のない勝手な思い込みから不当な要求をする人も珍しくないので困りものだ。そして、その不合理を冷静に指摘すると逆上されることも珍しくない。
歪んだ解釈の源泉が、一時的な思慮の不足から来る齟齬なら、立ち止まって冷静に考え直すことで改められるだろう。後天的には変わらない資質による低知能・邪悪・野卑などから来ているなら、改善は望めないように思える。
84篇の最後に示される”非常に冷静な「好意」”という表現が印象深い。その前提となる予測と計算が好意的な点も。
僕の奴らに対する意識は敵意に寄っているようだ。「多少はましになるかも」くらいの見立てを持つのも有りだろうか?
単純な二元論
91篇の「ニュートラルなスタンス」の話が面白かった。
両極端な単純思考、二元論。鋭い指摘は「敵意or好意」、中立な立場は「敵or味方」と、時々の都合によって捻じ曲げられる。
物事の複雑さを処理できる脳と善性がなければ、根本的な解決は困難だろう。ヒトの資質を覆すためにはムーンショットなブレイクスルーが必要だ。…SFへの逃避のような気もする。
まとめ
『追懐のコヨーテ』、面白かったです。
森エッセイはアレコレ考えたり想像したりする取っ掛かりになるので楽しいです。
頭の隅っこで朧気になっていた、「なんか違う😒」とか「合点がいかない🤔」と思っていた事に意識が向かうのも面白い!
1篇あたりの文字数が少ないので、ちょっとした時間にスッキリと読みやすい点も相変わらず良い!
頭の中の思考の流れをほぐしたり、刺激を与えて活性化したい時に良いかもしれません。
購入方法
追懐のコヨーテは以下の書店、電子書籍ストアなどで購入して読むことができます。
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