ヨシタケシンスケの書籍『あるかしら書店』の読書感想・紹介・レビュー記事です。
「本にまつわる本」を取り扱う専門書店『あるかしら書店』を舞台に、想像上の「本」や「本に関する物語」を著者の想像力たっぷりに描いた、絵本のようなイラスト集のような素敵で不思議な本。
コミカルな絵柄と予想の斜め上をいく夢いっぱい感が楽しい作品でした。
作品情報
タイトル | あるかしら書店 |
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著者 | ヨシタケ シンスケ |
出版社 | ポプラ社 |
初出 | 2017年 |
ページ数 | 102 |
価格 | 1,188円(Kindle版) |
キーワード | 絵本、イラスト集、書店、本、ユーモア |
作品概要
出典:あるかしら書店 | ポプラ社
『あるかしら書店』という架空の書店における店員と客のやりとりを通じて、想像上の「本」や「本に関連する物語」を描いた絵本・イラスト集。
常識にとらわれない自由な空想のお話と、コミカルで親しみやすい絵柄が魅力的。
思わず吹き出しそうになる笑えるエピソードや、奇抜で意表を突く寓話、想像全開なのに「あったらいいな~」なんて思わせてくれる地味に良い話などが盛り沢山。
あらすじ
町のはずれにある『あるかしら書店』は「本にまつわる本」の専門店。
お客さんが「○○にまつわる本、あるかしら?」と聞くと、店のおじさんが「ありますよ!」「こんなのどうかしら?」とぴったりな本を選んでくれます。
そんな『あるかしら書店』には、今日もいろんな本を求めてお客さんがやってきます。でも、まだ無い本もあるようです、それはどんな「本にまつわる本」でしょう?
「ありえない」の常識を「ありますよ!」で打ち破ってくれる書店員のおじさん!
個々のエピソードも面白いんですけど、本書全体の物語に”落ち”が付いているのも良かったです。
目次
- もくじ
- ちょっとめずらしい本
- 「作家の木」の育て方
- 世界のしかけ絵本
- 2人で読む本
- 月光本
- 本にまつわる道具
- 読書サポートロボ
- カバー変更器
- 本にまつわる仕事
- 読書履歴捜査官
- カリスマ書店員 養成所の1日
- 本のタイトルとそのた正しい並べ方
- 本のつつみ方
- 文庫犬
- 本とのお別れ請負人
- 本にまつわるイベント
- 本のお祭り
- 書店婚
- 想像力のリレー
- 世界一周 読書の旅
- 本にまつわる名所
- 本の降る村
- 読書草
- お墓の中の本棚
- 水中図書館
- 本そのものについて
- 本が四角い理由
- 本のつくり方
- 本のその後
- 本が好きな人々
- ゆっくりめくる本
- ひとりの本
- 本のようなもの
- 図書館・書店について
- ラブリーラブリーライブラリー その1
- ラブリーラブリーライブラリー その2
- ラブリーラブリーライブラリー その3
- ラブリーラブリーライブラリー その4
- 本屋さんってどういうところ?
- 大ヒットしてほしかった本
- 奥付
「なんだこれは!?」っていうような不思議なワードが興味をそそります。
方向性
おもしろさ (知性・好奇心) | |
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たのしさ (直感・娯楽) | |
あかるさ (←暗い/明るい→) | |
よみやすさ (文体・構成) | |
よみごたえ (文量・濃さ) |
雰囲気は「こどもの本」とか「児童書」に寄っている感じです。一方で、ある程度の経験があってこそ理解が捗りそうな、いわゆる”大人向け”のネタも結構含まれています。
対象年齢はざっくり小学生以上といったところでしょうか。漢字にふりがなは振られていませんが、文章は短く、絵が中心のため、年はあまり気にせず楽しめると思われます。
感想・考察
特に印象に残ったエピソードをピックアップして紹介&考えてみる。
本の降る村
出典:ヨシタケ シンスケ | あるかしら書店 | 52、53p | ポプラ社
空から振ってくるネタ。
空というものからは、サメとか、女の子とか、ブタとか色んなものが降ってくる。もちろん、本だって降ってくる。
面白いのは、降ってきた本が村や人々に与える様々な影響についてまで想像が及んでいるところ。
『本の降る村』の人々にとって、降ってくる本はあまりに身近でありふれたもの。
それは大抵の場合「読む」ものではなくて、自然がもたらす「恩恵(燃料・観光資源)」であり「災厄(大量降本災害・村外人による無謀な本掘り人災)」でもある。
と想像を重ねてみる。
“降本”の条件や規模に依るだろうけど、特産品として村おこしに利用したり、リサイクル(同じ章の『本のその後』も要チェック!)で再生紙以外にも色々生産したり…。実はすごい環境資源なのかも。
「本」の中身、著者と製本者も気になる。人間か自然かAIか宇宙人か神か?ファンタジーでもSFでも面白そう。信仰の対象になっていても不思議はないだろうなあ。
本のようなもの
出典:ヨシタケ シンスケ | あるかしら書店 | 78、79p | ポプラ社
本の擬人化ネタであり、逆に人を本に喩えた”逆擬人化”・”擬本化”でもある。
人が本の被り物をしているだけとも取れるのだけど、人と本の生き様を上手く掛け合わせ、教訓めいたことをユニークに表現しているセンスがすごい。
作中の「本」を「人」に置き換えても成立する。擬人化した本だった場合、最後に「だから、ぼくたちは、人が好きなのだ。」と言ってくれるだろうか。
まとめ
脳みそをマッサージされてコリがほぐされ解消されたような気分になる良本でした。
絵本やイラスト集のようなものをしばらく見ていなかったので、また手を出していきたいなと思えた点も良かったです。
読みやすさと消化の良さは抜群な本だと思います。何か読みたい時の景気づけや、頭と心をリラックスさせたい場合にも良いかもしれません。