森博嗣の長編推理小説『神様が殺してくれる』の読書感想・レビュー・紹介記事です。
しばらく森先生のミステリー作品から遠ざかっていましたが、久しぶりに読んだ本作は「しっかり推理モノ」&「どこか神秘的なミステリ」でもあって、お気に入りの一冊になりました!
ざっくりとした内容は、「国際刑事警察機構(インターポール)に所属する主人公が、フランス・イタリア・ドイツ・日本を舞台に起きる殺人事件の解決に挑む」という推理モノ。
物語は、主人公が一連の事件の回顧録を語る、という一人称視点の叙述で進んでいきます。一体誰が犯人なのか!?
作品の基本情報
- タイトル:神様が殺してくれる
- サブタイトル:Dieu aime Lion
- 著者:森博嗣
- 出版社:幻冬舎
- 初版発行年:2013年
- ページ数:275p(Kindle版)
- メディア:単行本、文庫、電子書籍
- 価格:620円(Kindle版)
- ジャンル:推理小説、ミステリー、長編小説


森先生というとSFを絡めたシリーズ物のミステリー作品が有名ですが、本作はノンシリーズの単発作品となっています。
あらすじ
パリの女優殺害に端を発する連続殺人。両手を縛られ現場で拘束されていた重要参考人リオンは「神が殺した」と証言。容疑者も手がかりもないまま、ほどなくミラノで起きたピアニスト絞殺事件。またも現場にはリオンが。手がかりは彼の異常な美しさだけだった。舞台をフランクフルト、東京へと移し国際刑事警察機構の僕は独自に捜査を開始した――。


美しすぎる青年リオンに翻弄される主人公。「神」とはいったい…。
ネタバレなしの読みどころ紹介
推理を楽しめる!
本作は、全5章にプロローグとエピローグが付く構成。コテコテの”探偵小説”に比べると、広義の”推理小説”といった雰囲気。
明確に「犯人はお前だ!」って謎解きするわけではないけれど、情報が出揃う最終章の第5章が謎解きパートになっている。
推理小説のお楽しみの一つ「フーダニット(Who done it)」な犯人当てを楽しめる。
たぶんフェア?
謎解きをするために必要な最低限の情報が提示されているかどうかの「フェア」「アンフェア」については、たぶん「フェア」だと思う。
読後に「これはどうかな…」と思ったところもあったが、よくよく読み返してみると、そう、たぶん「フェア」。
どんでん返しもあるよ!
良い推理小説は「読者を出し抜こうとする著者との対決」で、謎解きに成功しても楽しいけど、謎を解けなかったときの「やられた感」も楽しい。著者と知恵比べ勝負する感じで読むのが好き!
本作の「どんでん返し」は、推理小説に慣れている人には一見弱いと思えるかもしれないけど、想像の余地が残るという深みがあって、読後の余韻も良かった。


主人公の叙述で物語が進み「時間・視点」の描写が一定or落ち着いているため、全体的に読みやすくなっています。
”森ワールド”成分は、控えめだけど確かにある雰囲気だったので、森博嗣ファンの人も楽しみやすいでしょう。
ネタバレありの感想・考察
そうか「フェア」…かな!?
ただ、LGBT(レナルド×ミシェル×リオンの組み合わせだと全てに当てはまる?)の一卵性双生児による近親婚って事を考えると若干ゴリ押し感はあるかな。
「真犯人」は?
『レナルド』と『ミシェル』は、入れ替わったり担当を分けた「一人二役」や「二人一役」が可能だったということ。最終的に邪魔になった片割れが排除された可能性も考えられる。
『レナルド』を自称する者が、負傷したリオンに「怒らないで」「殺さないで」と言われて恐れられたり、廃人となったリオンを引き取ろうとする執着心を見せるあたりに、読後の想像が捗る!!
結局”藪の中”ではあるが、リオンの行動からすると双子の見分けが出来ていたと思うので(愛している方には別れの挨拶をするためにリスクを犯して会いに行く等)、生き残った『レナルド』が実行犯だと思う。その方がゾッとする…。
まとめ
森先生のシリーズ作品は、最初の「S&M」から色々と読んでいるのですが、2016年あたりの作品から遠ざかっていたので、リハビリを兼ねて未読の単発作品である本作を読んでみました。
Gシリーズの前期作やXシリーズでちょっとダレて離れていった感じだったので、久しぶりの”森ワールドなちゃんとした推理小説”を読んで、気持ちだけなら贔屓目もあって★5くらいに楽しめました。やっぱり推理小説はいいなあ。
本作は、他のシリーズ作品との繋がりがなく、単品で楽しめる作品。”森博嗣”を読んだことがない人にもとっつきやすいと思うのでわりとおすすめです。
『神様が殺してくれる』を読んで、途中までだったシリーズ物をまた読みたくなったので、Xシリーズの「タカイ×タカイ」から再開したいと思います。