スコット・ギャロウェイのビジネス書『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』の読書感想・紹介・レビュー記事です。
過去20年で大きく成長したテック企業『Google』『Apple』『Facebook』『Amazon』。4社をそれぞれ黙示録の四騎士になぞらえ、「彼らが力を手に入れることができた理由」、「それが如何に世界を創り変えたのか」、そして「創り変えられた世界で生き残る術」を分析・考察しています。
- Google:全知全能の無慈悲な神
- 第一の騎士:勝利/支配
- 何でも知っていてルールも作れる最強神
- Apple:ジョブズという神を崇める宗教
- 第二の騎士:戦争を起こさせる
- 死によって神格化した創業者
- 下半身に訴えるセックスアピールツール
- Facebook:人類の1/4をつなげた怪物
- 第三の騎士:飢饉をもたらす
- 150回の”いいね”で把握されるあなたの属性
- Amazon:1兆ドルに最も近い巨人
- 第四の騎士:疫病・野獣で死をもたらす
- 本能が求める消費衝動の徹底利用
基本的にはビジネス書なんですけど、中身はなかなか刺激的!
初出から4年経った2021年に娯楽目的で読んでも面白かったです。
作品情報
タイトル | the four GAFA 四騎士が創り変えた世界 |
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原題 | The Four: The Hidden DNA of Amazon, Apple, Facebook, and Google |
著者 | スコット・ギャロウェイ (Scott Galloway) |
出版社 | 東洋経済新報社 |
初出 | 2017年 |
価格 | 1,782円(Kindle版) |
キーワード | ビジネス、経済、ブランド |
作品概要
著者のスコット・ギャロウェイは、ニューヨーク大学の経営大学院教授(ブランド戦略/デジタルマーケティング)で、市場調査会社など複数の企業を立ち上げた起業家でもある。
タイトルに含まれる『GAFA』は、『Google』『Apple』『Facebook』『Amazon』4社の頭文字をつなぎ合わせたもの。
- GAFAが力を得たわけ
- GAFAは世界をどう創り変えたか
- GAFAが創り変えた世界でどう生きるか
目次(概略)
- 第1章:GAFA ― 世界を創り変えた四騎士
- 第2章:アマゾン ― 1兆ドルに最も近い巨人
- 第3章:アップル ― ジョブズという神を崇める宗教
- 第4章:フェイスブック ― 人類の1/4をつなげた怪物
- 第5章:グーグル ― 全知全能の無慈悲な神
- 第6章:四騎士は「ペテン師」から成り上がった
- 第7章:脳・心・性器を標的にする四騎士
- 第8章:四騎士が共有する「覇権の8遺伝子」
- 第9章:NEXT GAFA ― 第五の騎士は誰なのか
- 第10章:GAFA「以後」の世界で生きるための武器
- 第11章:少数の支配者と多数の農奴が生きる世界
序盤の第1章~第5章で「四騎士」の歴史・特徴・力について分析・解説。
中盤の第6章~第7章では、四騎士が成り上がった方法や、その力の秘密、共通点などについて著者の見解が述べられる。
終盤の第9章~第11章では、GAFAの後に新たな”騎士”になりうる企業についての考察と、四騎士が創り変えた世界で生き残る方法について言及される。
序盤~中盤に掛けての解説や考察は、データ(数字)と著者の経験が上手く合わさっていて、「なるほど」の納得感と、「そうだったのか!」の驚きがあって面白かったです。特に3・5・7章。
終盤にはあまり旨味が感じられませんでした。
方向性
おもしろさ (知性・好奇心) | |
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たのしさ (直感・娯楽) | |
あかるさ (←暗い/明るい→) | |
よみやすさ (文体・構成) | |
よみごたえ (文量・濃さ) |
全体的にリベラルな雰囲気。
考察は、基本的にはデータの数字に基づいた論理的なものとなっている。しかし、そこから導かれる見解には経験則や印象に基づくもの見受けられて、章毎に「論」と「感」のバランスにばらつきがあるようだった。
GAFAに対しては、地上の人間を殺す権威を与えられた四騎士に喩えている事からも、当然批判寄りの内容。ただ、論理的な考察に基づいたものが大部分であり、危険性の指摘などもくどさがなくて意外と読みやすい方だと思われる。
熱量的には第5章のグーグル語りが熱かったです。
第3章アップルブランドの「セクシーな戦略」という見方も、癖はあるけど面白かったです!Apple信者の不思議が分かったよう分からないような。
感想
切ない結論
四騎士と戦ったり四騎士に”悪”というレッテルを貼ったりするのはむなしいかもしれない。あるいは本当に間違っているかもしれない。私にはわからない。
しかしこれら四騎士を理解することは絶対に必要だ。それはいまのデジタル時代の先行きを予測し、あなたとあなたの家族のための経済的安定を築くための、より大きな力となる。この本がその両方の助けになることを願っている。
出典:著 スコット・ギャロウェイ | 訳 渡会 圭子 | the four GAFA 四騎士が創り変えた世界 | 第11章 414p | 東洋経済新報社
結論としては語られるのは大きく2つ。
1つ目は、第11章のタイトル『少数の支配者と多数の農奴が生きる世界』が示すように、ごく一部の優秀な人間とそうでない大多数が生きる世界がやってくるというもの。中産階級消滅!
既にそうなっているけど、それがさらに加速・拡大する。そして、GAFAの目的は純然たる「金儲け」ですよと。
2つ目は、そこで生き抜くための方法・考え方。GAFAのような巨人あるいは神を否定して目を逸らすのではなく、理解して上手く乗りこなして行こうぜ!ってな感じ。
独占的な力を得た大企業の弱点についても言及されているけれど、それを倒そうとする攻撃的な姿勢はあまり見受けられない。大多数の平凡な人に向けて積極的な守勢の生き残り術について述べられている。
「時期・才能・運」の3要素が全て満たされていないと、世界で戦うスタートラインにすら立てない現実の切なさよ🤣
1兆ドル超え
作中で語られるGAFAの株式時価総額「1兆ドル(100兆円)」超えは、2021年時点だとフェイスブック以外の3社が既に達成している。
特にAmazonは伸びたようで、本作が書かれたであろう時期のデータも考慮すると、著者の読みは結構良い線だったんだろうか。
Microsoftも1兆ドルを突破し、テスラも2020年に急上昇している。
まとめ
400ページ超のそこそこボリュームのある本ですが、テーマや方向性ががはっきりしていて読みやすかったです。
私はアップルやフェイスブックには縁遠いのですが、グーグルやアマゾンは利用頻度が高いというか依存してしまっているので、興味深い内容でした。
ジャンルとしてはビジネス本ですが、割と楽しみながら読める部類だと思います。デジタルデバイスやインターネットを利用する上でまず避けられないGAFAとの上手な付き合い方を再考するのに役立ちそうです。
Audible版が2021年4月23日から配信予定とのことで、聴く読書で試してみるのもいいかもしれません。