推理小説シリーズなどで知られる作家「森博嗣」のエッセイ「道なき未知」を読んだ感想&紹介記事です。
作品情報
「すべてがFになる」「黒猫の三角」などの推理小説シリーズで知られる森博嗣のエッセイ。
工学博士・研究者であり大学講師でもあった著者の独特な思考法が展開される。各章(回)の題材に対して筋道を立てた抽象的な考え方や対処法が特徴的。
道の先にあるものは未知だ。なにかがありそうな気がする。この予感が、人を心を温める。温かいことが、すなわち生きている証拠だ。
したがって、行き着くことよりも、今歩いている状態にこそ価値がある。知識を得たことに価値があるのではなく、知ろうとする運動が、その人の価値を作っている。
たとえば、人生という未知だって、行き着く先は「死」なのだ。死ぬことがこの未知を歩く目的、価値ではないことくらい、きっと誰でもわかっているだろう。
出典:道なき未知 本文・表紙そでより抜粋| 森博嗣 | KKベストセラーズ
- タイトル:道なき未知
- サブタイトル:Uncharted Unknown
- 著者:森博嗣
- 出版社:KKベストセラーズ
- 初版発行年:2017年
- ジャンル:エッセイ、自己啓発
作品内容
構成
テーマ別に全48回のエッセイが収録されている。1回あたりは4~5ページで構成され、毎回、著者の趣味である工作(自宅の庭の鉄道!)や飼っている犬などの写真も添えられる。
「月刊誌の連載→Web連載→書き下ろし」という変遷を経て6年越しで刊行されたとのこと。
読みどころ
個人的に興味深かったり共感できた回の見出しは以下。
- 第9回:人が歩くべき道?(道徳とはほとんど会話である)
- 第17回:精神論はノウハウではない(精神論が幅を利かせた時代)
- 第27回:気持ちを気にしすぎる気持ち(寄り添えない人の道)
- 第28回:理屈による説得は難しい(理屈よりも結果という現実)
- 第31回:死について考えよう(死に方を想像する)
耳が痛い話もあれば、「うんうん、そうだよなあ」と共感できる考え方などもあって不思議な解放感のようなものがあった。
ここに書いてあることだって、あまり信じない方が良い。役に立ちそうなところだけ、軽く掬い取って自分のために活用しよう。
出典:道なき未知 153ページ | 森博嗣 | KKベストセラーズ
まとめ
森博嗣というと「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」などの推理小説が好きで一通り読んでいますが、エッセイも独自の視点で書かれたものがあって面白いです。
良く言えば「理路整然」、悪く言えば「理屈っぽい・天邪鬼」みたいな書き方になっているけれど、難しい表現は使われていないのでかなり読みやすくもありました。
世の中で当たり前にまかり通っている何だか納得いかない”妙な事”に対する「なるほど感」を得たり、自分で自分を縛っている思考を解きほぐすヒントが得られるかもしれません。
本作と世界観を共有する推理小説シリーズの第一作目。