現代に甦ったヒトラーが「モノマネ芸人」として大ヒットしてしまうタブー満載の危険(!?)なブラックコメディ映画の視聴感想&レビュー記事です!
作品情報
概要
- タイトル:帰ってきたヒトラー
- 監督:デヴィット・ヴェント
- 製作国:ドイツ
- 公開:2015年
- 上映時間:116分
- ジャンル:風刺、コメディ
- 原作:Er ist wieder da(著:Timur Vermes)
- 公式サイト:映画『帰ってきたヒトラー』公式サイト
2014年のベルリン、総統地下壕跡地の近くで甦ったアドルフ・ヒトラー。行くあてもないため新聞の売店に居候しているところを、TV局をクビになり再起を図ろうとするディレクターのザヴァツキに「モノマネ芸人」として見出され、ドイツ中を旅しながら番組を制作することになる。その結果、注目を浴びてテレビの政治トーク番組にも出演するようになり大衆の心を捉え始めるのだが…。
予告編
内容紹介
作風は、「ヒトラーが2014年に甦る」という設定からも想像しやすい、賛否両論を巻き起こしそうなブラックユーモア満載のコメディ。ドキュメンタリー風な見せ方も多用されている。
主人公ヒトラーは、1945年の死亡後にタイムスリップしたという設定。ただ、「総統地下壕跡地の近くで目覚める(ヒトラーが自殺した場所)」のと「制服がガソリン臭い(遺体が利用されるのを防ぐために死後ガソリンで焼却された)」あたりからすると、タイムスリップというよりも死後の転生に近いのかもしれない。
画像引用:映画「帰ってきたヒトラー」より
劇中にはパロディも組み込まれているようで、同じくヒトラーを題材とする「ヒトラー ~最期の12日間~」にて、総統閣下がカイテル、ヨードル、クレープス、ブルクドルフの4人(とゲッベルス)以外を退出させて激昂シーンする名物シーンのパロディもあって面白かった。
ザヴァツキが「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主人公マーティみたいな格好してるのもタイムスリップ繋がりだったのかな?他にも色々とネタが仕込んでありそうだったなあ。
「ヒトラー、ナチス、第二次大戦」という血なまぐさいキーワードが含まれているが、作中に過激な暴力描写やグロテスクな表現は基本ないので(※一部あるもののデフォルメされたCGになっている)、”視覚的”にはコメディとして見ることができて安心。
ストーリー
物語の序盤はコメディ色が強くて笑える場面が多いが、中盤・終盤にかけてはヒトラーやナチズムの怖さが垣間見える場面もあって、「笑うな危険」のキャッチフレーズがしっくりきていた。
ストーリーの展開や落ちはあまり重要ではない感じで、強烈な風刺をどこまで笑えるのかが本作の肝に思えた。原作既読(内容は結構違うらしい)やネタバレを見た後でも楽しめそうなので、予備知識を得てから見るのも理解が深まって良いかも。
感想・評価
最初はヒトラーが2014年のベルリンに甦るというギャップが面白くて笑えてしまうのだけど、徐々に恐ろしい本性が見え隠れし始めると「これは笑えるのか?」という問が浮かんでくる興味深い作品でした。
一様には扱えないものの、日本とドイツは共に第二次大戦の敗戦国で負い目があるだけに、「心の底で共感しているからだ」「私を消すことはできない」「私は君らの中に存在する」「悪いことばかりではなかった」という劇中の台詞は、何だか刺さるものがありました。
「風刺を笑えばいいの」と言う若いユダヤ人娘の考えも分かるし、「出て行け!人殺し」と怒るユダヤ人老女の言い分ももっともだから、歴史と記憶の区切りをどこに置くか悩ましいところです。
ドイツの歴史のタブーに焦点をあてたブラック・コメディで、総合的には良くも悪くも真っ向から描かれている良作という印象でした。知識不足から意味がよくわからなかった部分やネタぽいシーンの再確認も兼ねて、そのうちまた見てみたいと思います。
2018年7月に「dTV」の無料体験期間を利用して視聴(※ラインナップされているか要確認)。「ヒトラー 最期の12日間」も無料で再視聴できたので良かった( ´∀`)bグッ!